アニー=フィッシャーAnnie FischerのBeethovenなど
色々なベートーヴェンのピアノソナタ全曲集が聴けるようになり、若い頃なら数万円、数十万円をかけてCDを蒐集しないと聴けなかったものがYoutubeで無料で聴けるとは本当に素晴らしい時代だと、Youtubeに足を向けて寝られない気持ちになる。
中でもハンガリー出身のピアニスト、アニー=フィッシャーは素晴らしく、どの曲も非の打ち所がない、というと言い過ぎかもしれないが、力強さ、技術の正確さ、テンポの安定、緩徐楽章の表現力、どこをとっても素晴らしい。
以前はイヴ=ナットYves Natのソナタ集も、テンポの絶妙な揺らしから生まれるドラマがあり好きだったが。また強いていえば、最後の有名な3曲(30,31,32番)は、若い頃にVedernikovの演奏にハマりすぎたので、いまだに違う人の演奏だと違和感を感じてしまう。Vedernikovのテンポのキレは他のピアニストには見られない。個別の曲を言い出すときりがなく、ワルトシュタインはアルゲリッチの爆速演奏もすさまじいし、熱情はやっぱりリヒテルの演奏は別格の熱量だしetc.、となるが、全部通して安心して聴けるアニーは最高。
一曲選ぶとすると、月光ソナタ。意外と「これは」という演奏に出会ったことがなかったが、やっと納得した。3楽章のagitatoは本物。
Mravinskyのリハーサル、Tchaikovsky
・リハーサルの映像。
未完成交響曲のリハでは、後ろの方で弾いているバイオリニストの指使い(弓使い?)を指摘に来たというエピソードなど。
・上のリハーサル映像のブラームス第4のロングバージョン(英語字幕)
Part1とあるが、最後は繰り返しの映像になってしまっているので、part2はないのだろう。スタッカートの指示など、面白い。指示の出し方は楽器の演奏の指導と似ているけど、すべての楽器に短時間で的確に指示するのは、指揮者の理解力、表現力、ジェスチャーなどが大切なことがわかる(下の動画でも、ジェスチャーについて言及あり。字幕がスペイン語だかイタリア語だかでわけわからないが、3:40からの人は英語で話している)
・フルトヴェングラーの貴重なリハーサル画像(ブラームス第4番)
ちょっと見るだけでも、ムラヴィンスキーとは全然違う。豪快、ダイナミック。
中村紘子御大のエッセイを思い出す。「日本のクラシックは根付いてからまだ100年ちょっと」とロシア人(当時ソビエト)に話したら「わが国と同じですな」みたいに言われたと。中村さんは、東洋の文化でクラシックを受け入れるのとは違うだろうということで、なんだか不思議な返答に思えた、というように書いていたと記憶している。
しかし、後発国が他国の文化を受け入れるという観点では、実はそう違わないところもあるのではないか。違う文化が受け取るからこそ生まれる面白さもあるのでは、と今になって思う。
といいつつ、ムラヴィンスキーのベートーヴェンやブラームスもよいけど、レニングラードフィルの絶妙に鄙びた音色と鋭いフレージングにはやっぱりチャイコが一番。地産地消in Russia。
Christian Li(11さい時)のVitali Chaconne
Oistrakhの弾くVitaliのChaconneに魅せられて、高校生以来ずっとその演奏を愛聴してきた。YouTubeでコメントを見ると、この演奏を涙なしに最後まで聴くことはできない、など書いてあり、高校生時の私が見たら烈しく同意しただろう。
が、そろそろ別の演奏も物色したくなり、色々聴いてみた。歴史的な名手の演奏は当然どれも素晴らしい。この上なく美しいが感情を感じさせない完璧なハイフェッツHeifetz、迫力にあふれた重厚なシェリングSzeryngなどが好みだが、イェリ=ダラニJelly D'AranyiやティボーThibaudなどの戦前の名手もいい。他にもSukやMilsteinもよいが、この11歳の天才少年には衝撃を受けた。
技術だけでなく、表現力も過去の超一流の歴々と全く引けを取らない。
8さいの時に撮影されたKreislerの前奏曲とアレグロもYouTubeにあり、こちらは技術も表現もプロと比べれば今一歩で(それでも充分すごいが)、そこからの進歩は驚くしかない。
ぜひいつか実演を聴きたい。
Kelly Joe Phelps、ブルース
土曜日の出勤時は、たいていNHK-FMでピーター=バラカンのWeekend Sunshineをかけている。
DJは選曲のセンスも、アーティストについての知識も素晴らしい。
https://www4.nhk.or.jp/sunshine/133/
ブルースはAfrican-American(黒人)の文化だとは思いますが、これだけ素晴らしいギターや歌唱を聞くと、Caucasian(白人)のブルースもいいなぁ、と思います。
そういえば20年前に京都に住んでいた頃は、日本人のブルースマンのライブにも時々いったものだと思い出します。近所にボールアンドチェインというブルースカフェがあったので、そこで時々ライブをしていたのでした。仲田耕実さんのライブとか、よかった(今検索したら、数年前にお亡くなりになったようです。合掌)
Kelly Joe Phelps / Window Grin
最初の記事、ピアノを習う事、ブンダヴォエ Bundervoët
年齢による記憶力の衰えか、同じ音楽の趣味について語り合う人が周りにいなくなったためか、理由は定かでないけれど、「お、これいいね」と思った音楽を3日経つと全く思い出せなくなったので、メモを作ることにした。
四十の手習い(本当は六十らしい)ということで、40歳の誕生日のすぐ後くらいから、ピアノを習い始めた。教え方の上手なとても良い先生で、幼稚園以来ピアノを習ったことのない私に丁寧にタッチや構え方から教えてくださっている。おかげで、今まで20年くらい適当にピアノを触ってきたが、自分がピアノという楽器をどれだけわかっていなかったか、よく分かるようになった。それととともに、自分でも分かるくらい音の出し方が上達した。
以前から、ピアニストによって音があれだけ違うのはなぜだろう、と疑問に思っていたが、例えば太鼓を叩いたって上手と下手があるんだから、打楽器としてのピアノの音が演奏者の技術(弾き方)によって変わってくるのは当然、ということが体験として理解でき、疑問はほぼ氷解した。
大好きなバッハをもう少し弾けるようになったら、最愛のハイドンのソナタにチャレンジしたいと思い、日々楽しく練習している。
Agnelle Bundervoët
アニュエル・ブンダヴォエ(1922-2015)
全く知らないピアニストだったが、熱心なレコードコレクターの人には知られた存在らしい。
Toccata in E minor, BWV 914の演奏をいろいろYoutubeで物色していたら、たまたま見つけて、圧倒的なテクニックと表現力に打たれた。
バッハだけでなく、リストやシューマンの演奏も素晴らしい。